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読書にあたっての予備知識

ジャン・コクトー「恐るべき子供たち」(1929年)

恐るべき子供たち」について

 「恐るべき子供たち」は、フランスの詩人・作家ジャン・コクトーによる中編小説であり、彼の代表作の一つとされています。物語は、姉弟で暮らすエリザベートとポールが、美しい少年・ダルジュロスと出会ったことから始まります。彼らの関係性は次第に深まり、ダルジュロスが退校処分になってしまうと、彼らの世界はますます狭くなっていきます。


 物語は、エリザベートアメリカ人の青年実業家と結婚し、莫大な遺産を相続した後に、彼女とポールの友人たちとの間で起こる破滅的な出来事を描きます。ポールは、姉の友人アガートに恋していますが、姉が彼女を騙してジェラールと結婚させたことで、絶望に陥っていきます。物語は、絶望したポールが服毒し、罪の露呈したエリザベートがピストルで自殺するまで続きます。


 「恐るべき子供たち」は、若い人々が自分たちの人生を支配し、その若さゆえに自己中心的に振舞うことによって、社会とのつながりを断ち切ってしまうことを警告する作品とされています。また、この小説は、作者のアヘン中毒の治療中にわずか17日間で書かれたとされており、その独特のスピード感と文体が特徴的です。物語の進展とともに、主人公たちの心情や葛藤が描かれ、青春期に揺れ動く魂の謎が探求されます。この作品を通して、コクトーは「己の運命の受諾」というテーマを訴えています。古典文学の悲劇を思わせる作品として知られ、コクトーらしさが最も表れているとされています。



ジャン・コクトーについて

 ジャン・コクトーは、フランスの作家、詩人、映画監督、美術家、劇作家、演出家として知られています。彼は1889年、フランスのメゾン=ラフィットに生まれました。


 コクトーは、1910年代に文学界に登場し、詩や小説を発表しました。彼はフランスのシュルレアリスム運動にも関与し、アンドレ・ブルトンルイ・アラゴンなどと親交を深めました。彼の作品の特徴は、幻想的で非現実的な世界観です。


 コクトーはまた、戦間期には映画界にも進出し、『美女と野獣』や『オルフェ』などの映画を監督し、芸術的な作品を数多く残しました。また、美術や演劇、オペラなどにも関心を持ち、幅広い分野で才能を発揮しました。


 彼の作品は、フランス文化において重要な位置を占めており、多くの芸術家に影響を与えました。